フードアグレッション

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先日、このようなコメントいただきました。「犬のリーダーシップなんて古い考えです。犬には、愛情を与えて、親子、恋人のような関係を築くべきだ。無償の愛を与えれば愛が帰ってくる。」というような。コメントくださった方に感謝すると共に、ここから学ぶべき事について考えてみたいと思います。

まさしくコメントの通りです。私達のすべての行動は沢山の愛情をベースに実行されています。でも同時に2つの疑問をもちました。1つは、犬のリーダーシップとはどの様な定義でおっしゃっているか?2つ目は、愛情についてです。確かに私も愛情をもって犬の世話をしています。でも「愛情を与えるだけで大丈夫」みたいな考えで、犬は人間社会に適合して生きていけるのだろうか。深い・・・。2つ目はまた今度詳しく考えてみたいです。

というわけで「リーダーシップ」について。まずは定義から考えてみます。皆さんは「リーダーシップ」と聞いて何を想像しますか。一人のカリスマ的人物がいて、その人が強制的に下の社会的ステータスにある人間を働かせる。歴史の教科書に出てくるあの絵、エジプトのピラミッドを作る為に大きな石を動かす奴隷と、それを管理する人の関係を想像しますか。

少し前は、このようなスタイルがリーダーとして定義されていました。エジプトの話は少し大げさですが・・・。(特に70年、80年代のアメリカのビジネスシーンで、カリスマ的リーダーシップ理論について盛んに議論されていた)リーダーシップとは、時代とともに変化していくもののようです。最近のリーダーシップの定義は、これまた沢山ありますが、このように表現されているものもあります。「自己の理念や価値観に基づいて、魅力ある目標を設定し、またその実現体制を構築し、人々の意欲を高め成長させながら、課題や障害を解決する行動」(ウィキペディア)カリスマ的リーダーが、トップダウン一辺倒で頑張っていても目標は達成できない。そうではなく、チームの意欲を高め、皆が成長できる環境を作りながらゴールに向かう必要があると考えられています。

そして、私の考えるパックリーダーシップにはこんなスキルが求められます。「①パックのあるべき姿を目標として設定し、それを達成するために②信頼関係を構築し、③規律(家のルール)を決め、守る④コーチングによりみんなが学べるようにサポートする」もちろんリーダーは犬ではなく、私やあなたです。

リーダーは一番苦労の多い立場です。リーダーの第一の責任は、パックに、「食事」、「雨、風をしのぐ寝床」、そして「十分な運動」を犬が生きている間、一生提供する約束することです。間違ってもDomination(権勢をふるうこと)ではありません。パックのだれかが脱落したら、後ろに戻って同じ目線で問題を考え、一緒に前へ進めるように行動する人です。

adorable animal beautiful breed
Photo by Simon Robben on Pexels.com

具体的に、メンバーからもらったお悩みについて、上記のパックリーダーシップと共に考えてみます。

お悩み:「遊んでるおもちゃやオヤツを食べてる時ヴーと言う時があります」

多くの方が、愛犬のフードアグレッションにお悩みかと思います。

①パックのあるべき姿の設定

あなたは犬達とどの様な関係でありたいか?そして犬同士の関係は?我家にはネコがいるので、ネコには優しくしなくてはならないとか。パックのあるべき姿を描いていきます。なぜこれが必要かというと、犬へしつけをしていく過程で、一貫性を持つためです。お母さんは、ソファに上がることを許すが、お父さんは許さない。これだと犬は混乱してしまいます。

2点目は特に重要と考えます。私達があるべき姿を決めないと、犬がルールを決めてしまうからです。例えばですが、我家では犬同士で、飛びついて遊ぶのは許されている行動です。しかし、お客さんを含め、人間に飛びつくのは子犬であってもルール違反として注意します。我家では、犬は決められたルールを尊重し、守ることが求められます。これが、私達と犬との関係です。

②信頼関係の構築

長い生存の歴史の中で、犬は毎日食事にありつけたわけではありません。約1万年前から犬は人間と一緒に生活を始め、狩りのサポートをしていたと考えられています。食べられる木の実が取れる日があれば、獲物のイノシシが捕れる日もあった。逆に何も取れない日が続く事もありました。そんな厳しい環境の中、食べられる時は、出来るだけ早く、多くの量を食べておく、自分の食事を横取りするものは許さない、と考えるのはうなずける話です。

日本の場合、ここ数十年の間に、殆どの犬は人間から定期的に食事をもらえるようになりました。犬と人間の長い歴史と考えると、食事の心配をしなくても良くなったのは、本当にここ最近の話であり、犬のこの習慣は無くなっていません。

では、私達人間が、犬と信頼を築くには、どうすればよいのでしょう。それは、今回のお悩みを例にとると、一貫性をもって食事を与える事です。毎日決めた時間帯に与える事で、「リーダーは定期的に食事をくれる頼れるひと、そしてこのパックと一緒に生活すれば、安定的に食事にありつける」と考えます。

③規律(家のルール)を決め、守る

私達が犬を飼う上でとても大事になるのがこの規律です。そして、規律はリーダーであなたが決める事が大切です。規律の種類はどんなものでも構いません。例えば、散歩に出る前、玄関ドアの前で必ず、「座れ」をさせる。また、家に中では、犬に入って欲しくない部屋(おもちゃがある子供部屋)、上ってはいけないソファ(例えば、イタリア製の高級品)があればこれらを家のルールとしましょう。

犬を「家族の一員として扱いたいので、制限することなく自由にさせている」と考えるのはオーナーの自由ですが、私は、これを犬が愛情として受け止めているとは考えません。なぜなら犬は、人間は入れるのに自分だけ入れない部屋がある事に対して、不満を抱いているとは思えないし(少なくとも我家の犬達を見ていて)、これにより愛情が足りないとは考えないからです。犬は、今与えられているものが何かを理解し、それを受け入れるだけです。「将来的にはあの部屋に入りたい」とは考えません。

ここからフードアグレッションについてです。まず第一に、食事の前に長い散歩に出て、犬にいっぱい運動させましょう。特に朝は、前の晩から睡眠をとり、ゆっくり休んだばかりなので犬のエネルギーは全開の状態です。この有り余ったエネルギーを使い果たすまで、アクティブに楽しく散歩しましょう。

ご存知の通り、1万年以上前からの習慣として、犬は食べ物を探しに遠くまで移動したり、人間に飼われ始めてからは、狩りのサポータ―として働いていました。食事は、長い散歩(仕事)の後にご褒美としてもらえるのが彼らにとって自然です。

第二に、食事の前にもう一つ仕事を与えます。犬の食事はリーダーであるあたなの食事が終わってからです。これは我家の方法ですが、用意した犬の食事を犬の待つ部屋に置いて「待て」をさせる。待たせている間、人間が食事をします。万が一、食べてしまった時は、速やかにやめさせ、再度「待て」をさせましょう。ゴールは、待っている間、興奮する事なく、要求吠えすることなく、落ち着いて待てるようになる事です。フードアグレッションにお悩みの方は、試してみてください。

④コーチング

最後にコーチングです。コーチングとは、相手の立場に立って問題の原因を考え、解決する為に一緒に行動する事です。上から目線で、正解を押し付けるものではなく、犬が正解に気付くことができるようにサポートしてあげる事です。

それでは、フードアグレッションへの対応です。ヴーと唸ってしまう原因は、犬が「誰か近づいてきた。私の食事を横取りするのでは?」と考えているのではないでしょうか。この場合、まず犬を安心させる事が大切です。

お勧めは、食事中にあなたの手で、もっと好きなおやつをボールに入れてあげる。おやつがなければ、犬が食べているドライフードを横から入れてあげる、または、手で直接食べさせる。かけてあげる言葉、または気持ちとしては、「安心して。あなたの食事を横取りしませんよ。もっとおいしいおやつをあげるよ」です。

もう一つ紹介します。食事を与えている最中は、その場から立ち去らずにその場に居てください。「食事は横取りしませんよ。でも、この食事はあくまでもリーダーである私からあなたへ与えたものです」と認識させる為です。方法です。我家では、食事のボールを私が床上20cm程の高さに持ち上げて食べさせています。(犬の大きさに合わせて、高さを調節)目的は、食事を私の手から食べている(=私から与えられているもの)と認識させる為です。

最初から持ち上げる事が出来ないかもしれません。食べている時は、出来るだけ近くにいてください。まず最初は、両足で食事のボールを両脇から囲んでください。咬みつく危険性がある場合は、靴を履くなど防御方法を考えてください。「本気で咬むかも」と感じる時は、速やかにプロのトレーナーに相談する事をお勧めします。

chocolate labrador retriever puppy on floor
Photo by Ellen de Ruiter on Pexels.com
終わりに

いかがでしたでしょうか?

パックリーダーシップとは、Domination(権勢をふるうこと)とは違います。リーダーは目標を決め、犬から信頼され(関係構築)、規律(ルール)を自ら作り、コーチングの手法でメンバーが規律を守れるようガイドすることです。

フードアグレッションへの対策は、まず同じ時間帯に食事を与えるなど、定期的な行動(食事、散歩など)を心がけ信頼関係を構築します。次に規律です。食事前に長い散歩に出て、しっかりとエネルギーを発散させる。また、食事の前に、「待て」(仕事)をさせてることにより、食事をもらうにはルールがある事を認識させます。最後にコーチングです。なぜ、ヴ―と唸ってしまうか原因を理解して、唸る必要が無くなるようにガイド、誘導してあげましょう。

お悩みの方へ少しでも参考になれば幸いです。以下に質問などいただけますと、更に詳しく相談に乗れます。もちろん無料です。

 

 

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