介護が必要になる前に準備すること

先日、メールアドレスを登録いただいている方から、「大型犬は飼いたいが、介護が必要になったらそばにいてあげられない」とのコメントをいただきました。ありがとうございます。

私達も7歳のドーベルマンを飼っていますが、彼の老後について心配していて家族でもよく介護の話になります。階段の上り下りができなくなったら人間一人で彼を抱えられるか?今のうちからカートを買って練習した方が良いのではないか?今の共働きの状況で介護が可能なのか?と漠然と議論はしていますが、我々は実際どれぐらい物理的(道具など)、そして精神的な準備ができているのか、犬の老後にはどのような症状がありどれぐらい大変なのかについてはあまりわかっていない事に気づきました。

本投稿前半では介護が必要とされる症状を理解し、介護にかかる労力や時間、そして今どんな老犬の飼育をサポートするサービスがあるのか、について紹介します。そして後半ではここ数年で老犬を介護することになるだろう自分と家族が、今からどのような準備をすべきなのかについて私なりの考えを紹介したいと思います。

老犬ホームの利用者は増えている

2016年8月の入居数は465頭。12か月後の2017年8月では約550頭。(増加率は約15%)そして2018年8月の入居数は699頭。(増加率は約20%)(情報:rouken-care.jpより)よって、過去2年間で見ると増加率も上昇傾向にあるようです。(投稿は2018年の10月)そして全国犬猫飼育実態調査によると2005年より犬の飼育率は緩やかな減少傾向にあり、これを踏まえると老犬ホームを利用する愛犬家の比率も増加傾向にあると言えます。

入居頭数

要介護とはどの様な症状なのか?

adorable animal beautiful breed
Photo by Simon Robben on Pexels.com

では愛犬にどのような症状がみられたら介護が必要になるのでしょうか。特に大型犬が要介護となった場合、その大変さは計り知れないものとなると思います。そこで、我々が飼っているドーベルマン(7歳)が要介護になったと仮定して、どれぐらい大変になるか考えてみたいと思います。以下はrouken-care.jpが紹介している代表的な介護ケアの一部です。そして各症状につきどれぐらいの時間が必要となるかを私個人の感覚でシミュレートしてみたいと思います。

  • トイレの介護-(症状)決まった所で排便できない、下痢、血便、便秘など
    • うちの犬であれば通常朝と夜の散歩で1回づつの排便します。彼がお腹を壊したときは、散歩中に1度もしない事もあれば、家を5~6時間留守にしている間に絨毯の上に4~5か所の便があることも。そして夜中外に連れて行くなど排便の手伝いが必要だし、床掃除、ペット用絨毯の洗濯、空気の入れ替えなどの作業が必要となってくる。健康な時と比較すると家族への負担がとても大きく、健康な時と比べて一日約1時間は余計に世話・かたずけに時間にかかるかと。
  • 食事の介護(症状)食べすぎる、食べない、吐く、自分で食べられないなど
    • 食べないの困りますが、食べ過ぎは飼い主がコントロールできるかと(認知症で食べた事を忘れてしまうのは除外)。自分で食べられない場合は流動性の高い食事を作りそれを食べさせる事が必要。健康な時に比べて一日約30分ほど余計に準備・世話に時間がかかるかと。
  • 散歩のサポート(症状)サポートがないと歩けない、止まってしまうなど
    • 散歩の時間は通常朝晩それぞれの平均が40分。サポートしつつだとあまり距離も歩けないし長時間散歩に連れ出すのも体力的に厳しいかと。ただ、カートに乗せる場合はストレス発散のため通常の散歩より長い時間が必要になるでしょう。よって余計にかかる時間は1日約30分と試算。
  • 寝たきり・床ずれへの対応(症状)姿勢を変えられないため床ずれを起こす
    • 床ずれを起こさないための寝返りサポートの目安は2時間毎とすると、付きっ切りの対応が必要となる。自分がそばにいてあげられない場合、そして家族の手も借りられない場合はペットシッターを利用する必要あり。
  • バリアフリー対応(症状)座ったり・寝たりできない、壁にぶつかるなど
    • 寝たきりの逆。体を支えながら、柔らかいマットの上に寝せてあげるなどの対応が必要。自分で横になれないほどの症状の場合は誰かがずっと付き添わなくてはならない。ペットシッターの利用を検討する必要あり。そこまで症状が重くない場合は、マット、床、家具に工夫する事で対応可能。
  • 認知症への対応(症状)徘徊、噛みつき、無駄吠え、無反応など
    • 夜中に無駄吠えをする、徘徊、噛みつきなどの症状が見られる場合は、家族の健康を害することも。また、近所とのトラブルへ発展する可能性もあるため老犬介護ホーム等の検討が必要。
  • 無駄吠え・夜泣き(症状)痛みによる夜泣き、寂しさによる夜泣きなど
    • この症状も家族の睡眠時間を削り、健康を害することになるかもしれません。また、近所とのトラブルへ発展する可能性あり。老犬介護ホーム等の検討が必要。

自分の犬が要介護となった場合を想像して必要となるアクションを考えてみました。いくつかのケースでただ余計に時間がかかるだけではなく2次的な負担がある事がわかった。家族の健康を害したり、ご近所さんとのトラブルにならないか気をもんだり、と数字(時間)で表せない大変さがあることが容易に想像できる。私の場合、上記の症状のいくつか同時に発症したら、普通のサラリーマンとしての生活と介護を成り立たせる事は非常に難しい

どんな有料サポートを受けられる?

white dog inside the cage
Photo by Jimmy Chan on Pexels.com

現在マーケットには以下のようなサービスがある。大きく分けて2つ。施設に預けるタイプ、自宅に専門家をよんで世話をしてもらうタイプ。以下にそれぞれのタイプの実例を紹介します。サービス内容、費用のイメージができると思います。

  • 老犬介護ホームの1例(事業者によって価格・サービスは一定ではありません)
    • サービス内容:
      • 朝の散歩に連れていってもらった後、朝食。寝たきりの犬のおむつの交換はこの時間に。朝食はその犬のコンデションにあったものが与えられる。
      • 通院が必要な犬はつれていってもらうし薬が必要な犬はもらう。一日数回の食事が必要な犬は昼食をあたえられた後昼寝。
      • 夕方にはまた散歩に連れていってもらう。
      • 夕食後はお休みの時間。部屋は防音仕様になっており夜泣きをする犬がいても大丈夫。
      • 夜にはスタッフによる見回りもあり犬たちに異常がないかチェック。
    • 費用:大型犬(20~35kg未満)の場合
      • 1か月プラン約5~7万円
      • 1年プラン50~70万円
      • 生涯預かりプラン150~200万円
      • 初期費用10万円程度と食事代は別途必要
    • 預けている飼い主も高齢の方が多いようだ。私個人の意見としては、愛犬を手放して施設に預けるのは何があっても避けたいところ。しかし、何か訳あって自分で介護できなくなったとき、こんなサービスがあるとまず安心でしょうか。
  • 老犬専門ペットシッターの1例(事業者によって価格・サービスは一定ではありません)
    • サービス内容:飼い主が在宅、不在にかかわらず犬の世話をしてくれる。食事・排泄・投薬・お散歩・遊び相手・寝返りなどのお世話。希望によって、耳掃除・爪切り・足裏バリカン・肉球ケアもお願いできるよう。寝たきりの犬はカートに乗せて散歩。
    • 費用(相場)(飼い主不在時)
      • 3時間まで 6,000~7,000円
      • 5時間まで 1万円前後
      • 8時間まで 1~2万円ほど
    • 費用(相場)(散歩代行)
      • 40分〜60分程度 2,000~3,000円
    • 使用例として自分の出勤中にお願いする事も可能かと。(10時間留守にする場合、8時間サービスをお願いすれば安心か)寝たきりの犬を介護している方にとってこれは非常に便利。ただ、長時間だと結構費用がかさむし、毎日お願いするとなると費用の負担は大きい。

私個人の意見として、老犬介護ホームの難点は愛犬と一緒に生活ができなくなるということだ。どんなに夜泣き、夜間の無駄吠えがあったとしても責任をもって自宅で介護したい。しかし、実際に介護ホームに預けている飼い主が増えているのが現状、一緒に生活できないという事は非常に心苦しいが、介護によって飼主本人や家族の生活が破壊されてしまっては本末転倒との判断なのだろうか・・・

どんな準備が必要か?

数年後に必ず介護が必要になる犬を飼っている方も多いと思う。ではどんか準備をすべきなのだろうか。正しく準備するにあたりキーとなる項目を考えてみた。どれが欠けても介護が非常に困難なものになる。

  1. 介護に必要な時間は作れるか?
  2. 介護に必要な体力はあるか?
  3. 精神的な負担に耐えられるか?

1.介護に必要な時間は作れるか?

私の場合、サラリーマンとして平日9時~6時で仕事をしています。通勤などを考えると合計10時間は家を空ける事になり上記にあげた症状にもよるが、このままの生活では介護は成り立たないでしょう。そう思って2年前に転職をしました。(もちろん転職の理由は犬の介護だけではない)通勤に1時間かかる会社から今の会社へは約30分。また、この会社には最近多くの企業が取り入れているテレワークも導入済(週に上限2.5日まで在宅勤務が可)。しかし、仮に2.5日の在宅勤務ができたとしても(実際の使用率は週1日未満)、1日10時間家を空ける日が週2回はあるので根本的な解決とはならない。では他にどんな解決策が考えらるか?上で紹介した老犬専門ペットシッターを利用する、100%在宅勤務できる仕事へ転職する、家族のサポートをもらう(奥さんに仕事を辞めてもらう。または、100%在宅勤務できる仕事への転職してもらう)などでしょうか。

答えはどれか1つを選択する事ではないと思います。仕事を辞めて収入がなくしてしまっては本末転倒ですし、すべての使用可能なオプションを使って時間をやりくりしていくしかないかと。

2.介護に必要な体力はあるか?

特に大型犬(20㎏~35㎏)の介護をする場合、腕力の問題が出てくると思います。階段の上下をサポートする、寝返りの助け、カートへ乗せるなど。1,2回やったら終わる作業ではなく、毎日24時間、週7日繰り返し行う作業だ。

準備としてできる事は、健康な時はスムーズにこなせた作業が要介護の状態になってどれぐらい大変になるかを把握すること。自分用に介護作業マッピングを作ってみた。(下表)

整理する方法は、まず毎日の作業を書き出し(横軸)、介護の種類(縦軸)が交わる部分で具体的なアクションはどの様なものになるのか、そして自分の負担の大きさを表す。(色で分別)重要なのは、本やインターネットで紹介されている介護のヒントなどではカバーできないあなた特有の項目を洗い出す事です。例えば、平屋とマンションでは負担の種類が違うし、負担の大きさも違ってくる。

結果を見て、自分または家族の手だけでは無理な作業を洗い出し(負担大:赤)、それぞれに対して対策を考える(例:道具を購入、道具を自分で作る、ペットシッターさんにお願いする、など)また、実行する前にインターネットから知恵をもらうのも大切だと思う。簡単なエクセルシートですが、ひな形が欲しい方は連絡ください。

介護マップ

精神的な負担に耐えられるか?

休む暇がない、自分の事は何でも後回しになり気が滅入る、夜泣きで十分な睡眠がとれない、無駄吠えによるご近所さんとのトラブル。もしあなたが精神的に大きな負担があると感じてしまったら、継続的な介護は非常に難しくなるでしょう。そのような困難から抜け出す方法は3つあると思います。

1つ目はペットシッターさんの使用頻度を上げて自分の負担を軽くする。これは結構な費用がかかりますが、ペットシッターさん利用頻度の調整が可能なので現実的な方法と言えるでしょう。一人で背負うのではなく息抜きする事が必要。

2つ目は愛犬を老犬介護ホームに預ける。1日から預けられるサービスがあるし息抜きは必要と思います。老人一人で3匹の大型犬の介護ができるか?無理があります。このようなケースではどうしても長期間預けなくてはならないかと。私個人としては上記のような状況にならないように準備をしていきたい。犬はあなたに介護されるよりも快適に暮らせるかもしれません。しかし、犬という動物がどんな生き物で、我々飼主に何を求めているかを考えると果たして犬にとって最善の選択なのだろうか。

そして3つ目はみなさんの反発を恐れずに言いうと「家族に見守られながらの安楽死」という選択。一度犬を飼うという責任を負ったなら、愛犬の最期を看取るのも飼主の責任かと。様々な理由があって介護ホーム等に預ける選択肢しか残されていない場合もあると思う。また、動物は一秒でも長く生きたいと思うのが自然なのだとしたら、サポートの行き届いている介護ホームにいた方が少しは長く生きられるかもしれない。しかし、面倒を診きれないという理由で、大好きな飼主(パックリーダー)と離れた場所で逝くことが、はたして犬にとって少々長く生きるより幸せなのだろうか。

close up photography of sleeping dog
Photo by Lisa Fotios on Pexels.com

最後に

皆さんはどの様な意見をお持ちでしょうか。一度犬を飼うという決断をしたら最後まで出来る限りの事をしてあげるのが我々の責任ではないかと思います。介護の過程では大きな選択を迫られる場面が出てくるでしょう。その時のために選択の軸になる考えを持てるよう今から準備していきたいと思います。

最後の最後にお願いです。皆さんのご意見お聞かせください。(賛同できる・できない。本件については違う角度からみている。など何でも結構です)また、あなたのお友達で興味ある方がいましたらシェアお願いいたします。

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